こんにちは、第一ビジネス部の高田です。同部の古謝さんと共に、2026年6月1日から6月4日にかけてサンフランシスコのモスコーンセンター(MosconeCenter)で開催された「Snowflake Summit 2026」に参加してきました。本記事では私、高田の視点からレポートをお届けします。
データ領域は進化が早く、モダンなデータ基盤のあり方やAIとの統合など、アーキテクチャのトレンドは日々変化しています。「今後どんなアーキテクチャが主流になっていくのか」「データマネジメントはどう進化するのか」そうした問いに対する自分なりの見立てを得るために、今回の参加を決めました。
イベントスケジュール
今年のスケジュールは、ざっくり以下のような構成でした。
| 日程 | 主なコンテンツ |
|---|---|
| Day1 | Opening Keynote・Welcome Reception |
| Day2 | Platform Keynote・JAPAN Reception・各種ブレイクアウトセッション |
| Day3 | Builders Keynote(直前に中止)・各種ブレイクアウトセッション |
| Day4 | Dev Day・各種ブレイクアウトセッション |

現地の熱気と、Keynoteが描いた大きな絵
会場入りすると、Snowflakeのマスコットキャラクターが行進していて、初日からお祭りのような雰囲気でした。入場列も長く、世界規模のカンファレンスに来ているのだということを改めて実感しました。
■Opening Keynote:「Agentic Enterprise」というビジョン
基調講演はバイオリンの演奏から始まりました。ありがたいことに日本語の同時通訳が用意されていたので、そちらを活用させていただきました。大手コンサルのAccenture、医療業界のSanofi、AIをけん引しているAnthropicの企業のリーダーたちが次々と登壇し、AI活用を「試すフェーズ」から「業務・組織・意思決定に組み込むフェーズ」へ移行させるための話が続きました。
今年のメインメッセージは、”Making AI Real For Business”。CEOのSridhar Ramaswamy氏が掲げたコンセプトが “Agentic Enterprise” です。一言でいうと「AIエージェントが、自社データと業務文脈を理解した上で自律的に動く企業」のことで、そのための4つの構成要素として以下が示されていました。
1. Enterprise Data and Context:AIの差別化はモデルではなく自社データにある
2. AI Models:特定モデルに依存せず、用途に合わせて選択できる環境
3. Software and Applications:Slack、Gmail、Salesforceなど業務アプリとの接続
4. Agentic Control Plane:部門ごとのエージェントが企業全体として一貫して動くための統制層
Anthropicの登壇者が語った “Trust is an accelerant”(信頼はアクセルになる)という言葉が印象に残っています。私はAIのガバナンスを必要なものと考えていますが、同時にAI活用のスピードを落とす要因にもなり得ると捉えていました。しかし、信頼を担保するガバナンスがあるからこそ安心してAIを活用でき、結果として活用の加速につながるというこの考え方は、AI活用を提案する上で参考になる示唆でした。
■Platform Keynote:「4つの幕」で語られた製品の全体像
2日目はプラットフォームに関する講演でした。「4 Acts」という構成で展開され、Samsung、Thomson Reuters、Under Armourなど大企業の稼働中の事例が次々と紹介されていきました。「AIを試している段階」という雰囲気はなく、すでに業務の中で動いているという前提で話が進んでいたのが印象的でした。
| Act | テーマ | 一言サマリ |
|---|---|---|
| Act1 | Erasure of Friction | 開発・データ活用を妨げる摩擦をAIで取り除く |
| Act2 | The Bastion of Trust | エージェント時代のガバナンスを要塞のように固める |
| Act3 | The Liberation of Data | データをサイロから解放し、オープンなコラボレーションへ |
| Act4 | Omnipresence of Intelligence | 全社員がデータサイエンティスト並みの力を持てる世界へ |
講演の最後にプロダクト部門統括のChristian Kleinerman氏が残した言葉が、今年のサミットを象徴するメッセージだったと感じました。
“Snowflake takes it from the era of ‘Can we?’ to ‘Shall we?'”
「できるのか?という時代から、さあやろうか、という時代へ。」

個別セッションからの学びと最新トレンド
個別セッションでは、基調講演で描かれた大きな方向性が、より具体的な機能や実装の話として補完されていました。以下、特に印象に残ったテーマをまとめます。
■AIコーディングエージェント「CoCo」の進化
旧称「Cortex Code」から CoCo にリブランドされたデータエンジニアリング特化のAIコーディングエージェントです。パイプライン診断・修復からアプリ開発まで、Snowflake上のさまざまな作業を会話で進められるエージェントとして位置づけられており、利用できる環境もブラウザ・CLI・IDEと幅広く拡充されていました。
今後一般公開予定の CoCo Desktop では、ローカルのdbt環境を自動検出して設定不要で連携できるデモが披露されるなど、データエンジニアの実務を意識した細かい改善が印象的でした。また CoCo Agent SDK の公開により、CoCoのエンジンを自社のアプリやパイプラインへ組み込むための選択肢も提示されました。
■業務エージェント基盤「CoWork」の進化
旧称「Snowflake Intelligence」が CoWork にリブランドされました。「データに質問する」だけでなく、実際に業務アクションまで実行するエージェントとして進化しており、個人ごとに使い方の傾向を学習し回答を最適化する仕組みも紹介されていました。
セッションでは製造業のリーダーによる事例も紹介され、工場現場での運用に組み込まれているという話は業務エージェントの適用範囲の広さを感じさせるものでした。
■データ接続・取り込みの新機能群
AIエージェントに正確な判断をさせるには、データが常に新鮮でなければなりません。セッションでは取り込み・接続まわりの機能が大幅にアップデートされていることが紹介されていました。
– Snowflake Datastream:Kafka互換のフルマネージドストリーミングサービス。既存のKafkaクライアントがそのまま接続できるのがポイントです。6月末からプライベートプレビュー開始予定であり、現時点ではまだ利用できない段階です。今後の一般提供に向けて注目していきたい機能の一つです。
– Zero-Copy Integration:SAP・Salesforce・Workday・IBMなど外部システムのデータをコピーせずに参照できる仕組みが整備されつつあります。特にSAP連携の一般提供開始は、
エンタープライズ環境におけるSnowflake活用の幅を広げるアップデートとして注目を集めていました。
– Openflow:各種データベースやSaaSとの接続を管理するサービスで、Oracle CDCが一般提供開始となり、全ハイパースケーラーへの対応が発表されました。
■データ&AIガバナンスの最新動向
「信頼できる答えを返すAI」を実現するには、「データガバナンスが土台になる」というメッセージがセッション全体を通じて強く出ていました。
Horizon Catalog を中心に、Snowflake内外のデータを一元的に管理・統治するための機能群が整理されており、外部カタログ(Unity CatalogやAWS Glueなど)との相互運用が強化されていました。
エージェントが業務で動き回る時代に向けた機能としては、「エージェントによる操作か人間による操作かを識別して制御する」仕組みや、「自然言語でガバナンスの意図を伝えると必要な設定を自動で生成する」機能がプレビュー段階の機能として紹介されており、ガバナンスの実装コストが下がる方向に進んでいると感じました。
また、Apache Iceberg v3のサポートが強化され、SparkやDatabricksなど外部エンジンとSnowflakeが双方向で同じテーブルを読み書きでき、ガバナンスもエンジンをまたいで適用される、という話は、マルチエンジン環境を前提とした今後のデータ基盤のあり方を考える上で印象的でした。
参加してみての感想
個別セッションは英語のまま進行するものが多く、リアルタイム文字起こしツールを使いながら内容を把握していました。それでも登壇者の熱量、会場の反応、スライドに映るデモの雰囲気など、テキストには変換されない部分が確かにあって、現地参加ならではの価値を実感する場面が何度もありました。
Day 2の夜には「JAPANレセプション」にも参加しました。想像以上に多くの日本人エンジニアが集まっていて、正直驚きました。Snowflakeが日本国内でここまで広がっているのか、それともこういった海外カンファレンスに出てくる日本のエンジニアの層が厚くなっているのかは分かりませんが、データ分野への関心の高さとコミュニティの広がりを実感する機会となりました。

これからのデータ基盤とAI活用
今回のカンファレンス参加を通じて改めて感じたのは、「データ基盤を整えることが、AI活用の前提になる」という認識を自分の言葉で持てたことです。基調講演でも個別セッションでも繰り返し出てきたのは、モデルの性能より「自社のデータと文脈をどれだけ整えているか」が差別化になるという話でした。
最終日のDev Dayでも、AIエージェントの進化に伴って私たちの役割が「実装する人」から「AIが正しく動ける環境やガードレールを設計し、価値創出を支える人」へ変わりつつある、という話が出ていました。AIそのものを作り込むことよりも、AIが活用できるデータや業務の土台を整えることの重要性が増しているという点で、今回のカンファレンス全体を通じて語られていたメッセージと一致していると感じました。
こうしたセッションを通じて、今後のアーキテクチャはAIを前提としたデータ基盤へ進化し、データマネジメントも統制のためだけでなくAI活用を加速するための仕組みへと発展していくのではないか、という見立てを持つようになりました。そのためには、まず「データのサイロ解消、セマンティックレイヤーの整備、ガバナンスの基礎固め」に取り組むことが重要だと考えています。その上で、CoCoやCoWorkのようなエージェント層を重ねていくことが現実的な進め方だと感じています。
今回の4日間で得た知見は、すぐに全部を実装に転換できるわけではありませんが、「こういう方向に進む」という解像度を上げておくことは、お客様への提案の質に直接つながると感じています。当初抱いていた「今後どのようなアーキテクチャが主流になるのか」「データマネジメントはどう進化するのか」という問いに対して、自分なりの仮説や方向性を考える上で、多くの示唆を得ることができました。
今回得た学びや気づきについては、10月から11月頃に札幌および沖縄で開催予定の参加報告イベントでも共有する予定です。詳細が決まりましたら、あらためてご案内します。